あなたのお客さまとしてやって来るのはどんな人でしょうか。
この章は時間をかけて考えていただきたい、とても重要なポイントです。

これをしているかどうかで、提供サービスの質や発信の質が大きく変わります。

例えば「お客さまの期待に応える」という目標を持っていたとして、「お客さまが何を期待しているか?」が具体的に分かっていなければ、ただの自己満足です。

例えば「ブログをたくさん書いて集客するぞ!」と思っているなら、誰に向けて記事を書くかはとても重要です。SNS発信も同様です。どんな内容を発信すべきかはターゲット設定で決まると言えます。

また、この章で行う「ターゲット設定」がどこまで細かく正確にできたかによって、この後に説明する、認知(集客)/比較(ライバルとの差別化)にも大きく影響します。

お客さまを理解して、準備と先回りをしましょう。

あなたのお客さまはどんな人?

あなたが理想とするお客さま像を、可能な限り具体的に描いてみてください。実在する人でも、実在しない人でもよいです。たった一人に絞り込むくらい想像できるのがベストです。

あなたのお店にやって来るお客さまはどんな人でしょうか。
どんな人にお客さまとして来てほしいですか?

【例】
・女性
・犬を2匹飼っている
・自分の店から徒歩圏内に住んでいる

これだとまだまだ足りません。
理想は次のようなくらいの掘り下げです。

【例】
高橋裕子。50歳。女性。主婦。
埼玉県で旦那と12歳のプードルと暮らしている。
子供は大学生で実家を離れている。
犬を飼うのはこの子がはじめて。
車の免許は持っておらず、行動範囲は自転車で行ける距離まで。
趣味は家庭菜園と料理。庭で採れた野菜を近所の犬友におすそ分けしている。
ある日愛犬とお散歩していたら、久しぶりに会った犬友に「腰が曲がってきたね」と言われ愛犬の老化を自覚。
動物病院に行くも「歳だから仕方ない」と言われる。
諦めきれずネットで「犬 腰 ケア」と検索したところ犬の整体という存在を知る。
愛犬の姿勢をこれ以上悪化させたくない。

この高橋さんは適当に考えた実在しない人物です。
でもここまで決めると、この高橋さんがどんな暮らしをしているかも想像することができます。

例えば、
子育てが終わっており、共働きでないということは時間的/金銭的な余裕がありそうだな、とか。
SNSは利用しておらず、情報源は口コミか雑誌かネット検索かな、とか。
人付き合いを大事にしている一方で、人の言葉に影響を受けやすい素直な性格かも、とか。

というように、どんどんイメージが見えてきて戦略が立てられる、という流れです。

この、たったひとりに絞るくらい突き詰めた人物像をマーケティング用語では「ペルソナ」と呼びます。

ひとりに絞る必要なんてないじゃない。
お客さまは多い方がいいんだから、いろんな人を想定したいな。

こう思ってしまうかもしれませんが、後の章の「ブランディング」において、ペルソナはとても重要です。
先に少し説明しておくと、ターゲットを広く設定していると、特化したライバルが現れたときに負けてしまうためです。

それでは、あなただけの理想のお客さま像を描いてみましょう。

ちなみに、実在する人物でもOKです。
もうすでに理想的と感じるお客さまがいる場合、その人を分析することで、理想のお客さま像をより具体的にできます。

ターゲット設定のためのワーク

ペルソナについて深堀りしていきましょう。
あなたのお客さまはどんな人ですか?
紙とペンを用意してください。
全て埋める必要はありませんし、逆にもっと書き足してもOKです。

プロフィール

名前は?
性別は?
年齢は?
どこに住んでる?
誰と住んでる?
職業は?
休みはいつ?
移動手段は?
趣味は?
何をしている時間が一番長い?
好きな色は?
交友関係は?
ドッグカフェなど犬連れの店の利用頻度は?
何(誰)を経由してあなたを知る?
PCとスマホどっちを多く使う?
SNSの利用頻度は?何のアプリを使ってる?
SNSを開くのは何時頃?
犬に関するこだわりは?(食べ物は手作りフード、首輪よりハーネス派、など)

一緒に暮らす犬について

犬は何匹?
犬の名前は?
犬種は?
犬の年齢は?
どういう経緯でこの家族の一員になった?(ペットショップ?保護犬?)
どんな性格?
好きな食べ物は?
好きな遊びは?
健康状態は?
覚えているコマンドは?(お座り、お手、待てなど)
どのくらいしつけられている?

悩んでいること、解決したいこと

ペルソナはどんな悩みを持って、あなたを頼ろうと考えるでしょうか。
なるべく具体的に、下記の例より長い文章で書けると最高です!
複数思いつく場合、悩みの優先順位をつけてみてください。

例:足が弱って踏ん張れていないみたいだけど、病院に行くほどではない。
例:パテラみたいなんだけど治療はできないって言われて困っている。
例:歳を重ねていく愛犬に私がしてあげられることはないだろうか。
例:アジリティで記録を出したいけど、ハードな訓練が足に負担になってないか不安。
例:近くにドッグ整体がなく、私は車も持っていないし、老犬だから長距離を歩けない。
例:保護犬で女性に触られるのを怖がる。男性のドッグセラピストはいないかな。

解決/改善した未来

ターゲットにとってのゴール、目標はなんですか?

例:最期まで自分の足で水を飲みたいときに飲みに行ける
例:ケガをしてから癖になった首の傾きが改善する
例:整った姿勢でドッグショーに出場して結果を出す
例:家に慣れず緊張していた保護犬がリラックスしてくれる

検索ワード

あなたのターゲットは悩みを解決するために、どんな言葉でインターネット検索をかけますか?
SNSでの集客を検討している場合はハッシュタグでもOKです。
最低10種類考えてみてください。
(ターゲットがPCやスマホを使わない想定なら回答不要です)

例:神奈川 犬 整体
例:犬 マッサージ シニア
例:犬 ケア スクール
例:犬 おしゃれ サロン
例:プードル パテラ ケア
例:犬 足根関節 筋肉
例:#犬がいる暮らし

あなたはこの人に、何ができますか?

人物像が見えてきました。
この人の抱える悩みに対して、あなたは何ができますか?
どんな言葉で、自分にはその悩みを解決する手段がある!と伝えますか?

この人になにを提供/伝えたいですか?

一つである必要はありません。
なるべく具体的に、いろんな角度から言葉を見つけられると素敵です。

例:セルフケア講座やってます。オンラインコースもありますよ。
例:出張施術もやっているので車がなくても大丈夫です。
例:動物病院に併設されている、獣医さんに認められた技術です。
例:マッサージだけでなく、犬の手作りごはんのレシピも紹介しています。
例:まずは無料でお話聞きます。

この人はどんな言葉に共感しますか?

あなたはペルソナに、なんと呼びかけますか?
どんな言葉を見て「私のことだ」「うちの子のことだ」と思うでしょうか。

例:皮膚の弱いワンちゃん向け
例:噛み癖があるワンちゃんも対応できます
例:近くに相談できる人がいなくて困っていませんか?
例:獣医に「老化だから」と言われても諦められないですよね

どんな行動をしてほしいですか?

前の章の「目標設定」を思い出してください。
あなたのゴールとお客さまのゴールはどのくらい重なっているでしょうか。
お客さまのゴールはあなたのゴールに繋がっていますか?

まとめ

それではこの章のまとめです。
ターゲット設定がうまくできていると、以下の質問にスムーズに回答できるはずです。

  • 誰のために?(ターゲットのプロフィール)
  • どんなサービスを提供する?(相手の悩みの解決方法)
  • どんな言葉で提案する?(共感してもらえる言葉)
  • どんな未来を提供する?(お客さまのゴール)
  • どんな行動を起こしてほしい?(こちらのゴール)

特に集客では、ペルソナの「悩み」「共感ポイント」をたくさん見つけることが重要です。
これはそのまま、ブログやSNS投稿の発信内容にできるためです。

今後集客をしようとしたときに、チラシのキャッチコピーが思いつかないブログの発信内容がネタ切れ、という事態に陥った場合、「悩み」と「共感」が浅い可能性があります。

実は上で質問した「悩んでいること、解決したいこと」を書き出してもらったワークは、プロのマーケッターが行う場合、50~100個ひねり出すことが求められることもあります。

同じく「この人はどんな言葉に共感しますか?」50~100個見つけて、ペルソナの悩みと組み合わせることで、ネタ切れ問題は解決です。

そこまでやれとは言いませんが、そのくらいペルソナに寄り添って考えることで、提案できる内容も、提供できるサービスの質も変わってくるということです。

そのために必要なのはリサーチ。
ターゲット設定を具体的にしていくことです。
特に今はまだ事業を始める前で、お客さまを集めるのはこれからという場合、実際にお客さまに合うことでターゲット設定をだんだんブラッシュアップして、さらに深く相手の心に届く方法を模索していくことになります。

それにより、「悩み」「共感」はどんどん見つかっていくはずです。

「誰のためにサービスを提供するか」が見えてきました。
次の章では「認知」の解説をします。

理想のお客さまがいたとして、残念ながらその人はあなたのことを知りません
どうやって自分との接点を作り、どうやって興味を引いたらいいだろう?
そんなお話をしていきます。